12/11/2022

「もし、ロケットの席が与えられるなら、どのシートか聞かずに乗りなさい」
 ーシャロン・クリスタ・コリガン・マコーリフ

 

 

 本記事は2022年のどもがよアドベントカレンダーの12月6日分の投稿記事です。

2023/1/18 追記したり修正したりしました。年も明けてずいぶん経つのに!?

 

 どもがよアドベントカレンダーについてはこちら。

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 昨日の記事はこちら。

 

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 創作活動を続けながら新しいものに触れ続けていらっしゃる…!しゅごい…!

 クゥーン(最近自分がどちらもできてないことを思い出して昏倒)

 

 そして今からの記事は前回の続きです。

 

 

 

 

やっぱりみんなWW2がすき Hearts of Ironシリーズ

 

「まず工場を2回ししてから歩兵を99ラインぶち込んで」

「おじいちゃん、時代はとっくにHoI4よ」

 

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ゲームの紹介

 

 2016年に最新タイトル「Hearts ofIron Ⅳ」が発売された。1936年から1948年、人類の歴史上最も多くの死者を出した第二次世界大戦前夜からその終結までを当時世界に存在した国家のいずれかを選び、導いていく。通称「HoI」。最新作は今年10月に公式日本語化されている。

 本作の主眼は一にも二にも戦争。国家の工業力を抽象的に表した「IC」を工場建設によって増やし、増やしたICを軍事ユニットにつぎ込み、国家総力戦の名の下に領土の占領による「敵国」の打倒を目指す。つまり、究極的には陣取りゲームが本質と思う。

 内政は基本的にICを育てる為だけに存在し、外交はイデオロギーをその基準にする陣営と呼ばれる連合国や枢軸国といった「国のチーム分け」と、ICを生み出す為の資源の確保の為に存在する。国家の行動が全て軍事ユニットの生産・改良とそれを用いる戦争に繋がっている。内政も外交も行きつくところは戦争。それがHoIというゲームだ。

 また第二次世界大戦が国家総力戦であり最終戦争である以上、史実でもそうであったように「そこそこのところで手打ち(講和)」が基本的に認められていない。これは歴史背景的にイデオロギーが戦争の根幹にあったことも大きいだろう。相手がヨーロッパ全土を征服したナチスドイツだろうが、世界中に植民地を持ち七面倒くさいことこの上ないイギリスだろうが、隣のプロヴィンスに移動するだけで兵が溶け時間が溶ける無限のシベリア行軍を強要するソビエトだろうが、ゲーム用にデチューンしてなおありえないくらい強い合衆国だろうが、基本的にはその(概ね)全土を占領・制圧して城下の盟を誓わせる必要がある。

 枢軸国に勝利をもたらして暗黒の歴史を作るもよし、世界中を赤色革命に巻き込むもよし、満州国で世界征服するのもよし。戦え、このゲームはその為に生まれた。ズバリ、「第二次世界大戦の戦争指導シミュレータ」である。

 

ゲームの現在

 

 先述の通り6年前に最新タイトルが発売されている。6年前というと一昔のようにも感じるが、もともと第二次世界大戦というテーマは歴史好きの間でも、ゲーム好きの間でも非常に人気の高い分野であり他シリーズと比してプレイヤーの母数が非常に多く、6年前からずっとこのゲームをやっている、という息の長いプレイヤーが多い。DLCは継続的に展開され、MODも盛んに開発されている。特にHoIにおけるMOD文化は他のシリーズとは質、量ともに一線を画すレベルで発展しているといっても過言ではなく、それだけ多くのプレイヤーに愛され続けている証しだと思われる。

 一方で17年前に発売されたシリーズ最大のヒット作であるHearts of IronⅡは最新作のⅣとはシステムや遊び心地が大きく異なることもあり、しつこい根強い愛好家が未だに存在する。こちらも少しずつMODが開発されていたりもする。初代DSが2004年12月発売、と言えばどれだけやばいかを想像してもらえるかもしれない。

 これはもうどちらのほうがより良いゲーム、という話ではなく、単純に好みの問題だと思う。それだけ永く、広く愛されているという証だろう。HoIⅢ?そんなものはない。

 

ゲームの今後

 

 前回の記事でパラドが現在目指している方向性として「マイクロマネジメントの削減」、「3Dヴィジュアルの向上」、「ユニットを動かしての陣取り合戦からの脱却」を挙げた。HoIⅣがこの方向性に則って作られた、というよりHoIⅣの発売とその後の開発の進展からこの方向性が示された、と言ってもいい。

 未だに根強い人気を持つHoIⅡから研究システムや工場建設システムの改修と軍事ユニット生産システムの転換でマイクロマネジメントを取り除こうとし、地域や国に即したリアルな3Dモデルを増やし、プレイヤーが師団一つ一つを動かすことから開放しようと戦線システムや制海権システムを導入した結果がHoIⅣで、確かに当初は賛否両論あったが現在のプレイ人口を考えればその改革の多くは受け入れられたと考える。個人的には研究機関は復活してもいいんじゃないか、と思うのだけども。あまりに抽象的過ぎるので…。

 では今後もHoIⅣが順風満帆かというとそうとも言い難い。6年という月日はEU4と同様、HoIⅣにゲームとしての疲労を起こしつつある。既存国のナショナルフォーカスを汎用から専用に変えただけ、といった小粒なDLCが乱発されて既存のファン層(くそでか主語)はため息をついているし、ただでさえ最初から複雑なのに6年間増設と改修が繰り返され肥大化したシステムは、初心者にとっつきにくくなっていることは否めない。

 かくいう筆者も最近は距離を置いてしまっていたりする。ただEUと違い、もうすぐ次が出るか、というと開発チームは遣り残したこと・やってないことが多そうなのでHoIⅤはまだまだ先になりそうだ。

 

 

そして、時代は未来へ Stellaris

 

宇宙は人類だけが住むには大きすぎるが、貴様らトカゲの出来損ないと一緒に住むには狭すぎるのだ!(宣戦布告)

 

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ゲームの紹介

 

 このゲームの開始年代は西暦2200年。未来である。

 人類は恒星間航行能力を手に入れ、いよいよ無限(ゲーム的には有限)の大宇宙へと飛び出す。

 そして人類は孤独ではなかった。

 フェルミパラドックスは肯定的に解決された。この宇宙には、我々以外にも知的生命が居たのである。

 

 2016年に発売されたステラリスはあくまで地球上の人物や国家をテーマにしたストラテジーゲームだったこれまでのパラドとは違い、人類未踏の宇宙を舞台として人類が宇宙を探索し、その生存圏を広げていく、いわゆる4Xゲームの形式を取る。"eXplore":探検、"eXpand":拡張、"eXploit":開発、"eXterminate":殲滅を銀河を使って行う。

 開発していく基本的な単位は知的生物が居住する惑星で、その惑星が所属する恒星系がハイパーネットワークと呼称される極めてゲーム的ではあるが宇宙上の航路で結ばれており、銀河マップを構成している。ゲーム開始時の設定にもよるが恒星系の数は数百にも及び、1つの恒星系に1つの惑星というわけでもないので時と場合によっては数千もの惑星と数十の宇宙文明がうごめく世界を生き抜いていかねばならない。結局地球でやってることと一緒じゃねえかって?それはそう。

 惑星の開発は幾度かのアップデートを経て現在は「惑星上に施設を建設してそこに人口を抽象化したPOPアイコンを能動的に配置し資源を生産する」というかたち、つまりボードゲームで言うところのワーカープレイスメントに近い形式を取る。POPを使ったワーカープレイスメント、という基本はステラリスの発売当初から変わっていないのだが、現行のシステムに至るまではかなり紆余曲折があり、数度のアップデートのたびにゲームシステムが大きく変更されゲームそのものが大きく様変わりしたが、何とか現行のシステムで落ち着いた。

 また、人口をPOPというかたちで抽象化してひとかたまりにして管理するシステム自体は恐らくはVICの系譜を継いでいる。というか異種族を(異民族ではない)同化したり、ジェノサイドしたり、家畜化したり、国連じみたものを作って外交要素を強化しようとしたり、資源の需要供給のダイナミズムとそれが戦争に繋がる流れがあったり、を考えると「VICでやれないことを宇宙でやった」んじゃないか、という気がすごいしている。いまやVICはあるのだけれど、いくらゲームとはいえ人類が人類を家畜にしたり去勢したりするシステムはたぶん作れないので。

 人類文明以外にも宇宙は知的生命体であふれている。人類とほぼ同時期に宇宙進出を果たした文明(もちろん人の形はしていない。爬虫類っぽかったり魚類っぽかったり誰がどう見てもエルフっぽかったり植物っぽかったり狐っぽかったりきのこっぽかったり直球でゴキブリだったりする)、かつての人類のように宇宙に飛び立つほどには発達していない文明、そしてかつては全宇宙を支配し今なお膨大な軍事力と国力を有するも、国としての衰退期を迎え幼年期の宇宙文明を見守る先進文明、宇宙怪獣ともいうべき巨大宇宙生物、宇宙を旅する銀河貿易ギルド、小惑星軍に住み着き略奪と傭兵家業で食っている銀河遊牧民、etcetcetc・・・。設定によってはかつて人類が他星系に移住しようとして失敗して放置された同胞の生き残りの文明があったりするかもしれない。

 そしてこのゲームは人類以外でも「自分なりの知的種族をデザインして」その種族でプレイすることもできる。そして種族という概念は「有機生命体」という枠にすら囚われることはない。岩石種族として銀河中に同族を搭載した隕石を落とすも良し、水棲種族になってありとあらゆる敵文明を海の底に沈めるも良し、機械文明になって有機生命体の根絶のために銀河を征服するも良し、ボーグやセンチネルやインキュベーターとなって銀河を集合意識の水底に沈めるもよし。もちろん平和的に宇宙を統一することも困難だができなくはない。頑張れば銀河連邦を建設したあとに銀河皇帝を名乗ることだってできるぞ。「ギャラクシー4Xグランドストラテジーゲーム」を思う存分楽しんでほしい。

 

ゲームの現在

 

 年1本のペースでゲーム性を変える新たな要素を追加するDLC、拡張パックが発売される。多くの場合これに合わせてバージョンの小数点第一位を変えるくらいの大型アップデートがなされ、この11月にも大型アップデートがあった。そして後述するが、この大型アップデートがステラリスがパラドゲーの中でロングタイトルでありながら若々しくある理由の一つにもなっている。

 加えて、種族パックやストーリーパックという形でポートレートやイベントを追加する小規模DLCもコンスタントに発売されている。MOD界隈も活気がある。

 

ゲームの今後


 発売後6年、ということでどうせ初心者お断りパラド九龍城なんだろう、と思うかもしれないが、ステラリスは「バージョンが変わったら別のゲーム」「バージョンが変わったらwikiの記述が全て役に立たなくなる」と言われるほどバージョンチェンジ、大型アップデートのたびにシステムが大幅に刷新され別ゲーと化し、その都度スクラップアンドビルドをしている。船の航行システムが選べる初期バージョンのステラリスなど現行バージョンから見れば本当に同じゲームか疑うレベルだろう。

 これはステラリスの開発陣がマイクロマネジメントの削減を偏執的なまでに掲げていることも大きな理由と思われる。また、複雑化、初心者お断りを惹起する要素はその多くが拡張パックでの追加要素なので、バニラ状態で複雑化がそこまで行き過ぎてる感触はない。バージョンアップによりゲームシステムそのものを新陳代謝させ過度な複雑化を防いでいる印象がある。

 またプレイヤー層は他のパラドゲーと違い、ゲームが主にフォーカスしているのは歴史好きというよりはSF好きなので、初心者に対する間口も広く継続的なファンをつなげているのではないか、と思う(他の歴史パラドゲーの場合「VIC3が出たからHOI4一旦お休みしてあっちやるか」みたいなことになるし、そもそも「歴史が好きです」と「SFが好きです」は後者のほうが絶対数が多いと思う)。

 そういう意味では、ステラリス2.0はまだもう少し先の話だろう。

 最後に、Steamの製品ページにおいて、このゲームの「最も参考になったレビュー」を引用させていただき、筆を擱く。

当人は2022年2月に無事進級したとのこと。おめでとうございます。